Ichigo Sugawara|たいせつなひかり (http://lights-gallery.com/archive/2024/11/1921/)の展示空間にて、2期目となる参加者の皆さまと、対話型鑑賞ワークショップを開催しました。
今年度のワークショップでは、2期目の皆さまとは「さらに深く広く思考する」ことを目的に鑑賞に取り組みます。一回目の「視点を広げる」そして、2回目の「視点を深める」ワークショップを経て、最終回はこれまでのワークを活かした鑑賞を意識し取り組みました。
今回の作品は一階展示スペースにある、一枚の風景写真です。感想を伺うと、早速さまざまな意見があがりました。「雪景色に見える。道が続いていて、足跡がまだないから作品に写っていない方向から歩いてきたのだろう」「自分が行ったことのある場所と全く同じ光景に見える」「実は雪景色ではなくて、露出度を高めた結果全体が白くなっているのではないか。写真なのか、絵を描いたようにも見える」「一見白一色の作品かと思い、今回は難しそうだと思っていた。でも、近づいてみると実は沢山の要素があって、徐々に風景が立ち上がってきた」
ほかにも会話を進めるごとに「実はこの部分は海かもしれない」「風が吹いている気がする」「どうして雪景色に見えるのだろう?結晶は見えないのに…」などと、沢山の風景にまつわる視点が出てきました。
途中、写真なのか?という問いが出たので、カメラで撮影された写真であることをお伝えすると、皆さんから驚きの声が。そこから「撮影したのだとすると、どうしてここまで白くぼやけた作品にしたのだろう?もっとはっきり景色を映すこともできたはずなのに」という意見があがりました。そこで、皆さんがこの作品からどのような感情を抱いたかお伺いすると、「他の作品も同様に、最初はよく見えないのに時間をかけてみていくと風景が立ち上がってくる。あえてじっくりみさせようとしている気がする。最初の印象に囚われてはいけないというメッセージ?」「雪景色という印象はあるけど、不思議と冷たさを感じない。雪そのものが写っていないから?目立った具体的な像がなく、全体を見渡すように構成されているので、広々とした光景そのものに目がいく」「静かな感じ。確かに荒っぽさや冷たさがない」「じっくりぼーっとみていたい感覚になる」と言った意見があがりました。皆さんそれぞれの感覚で、うつらないものを写そうとする作家の意図に触れてくださったようです。
ここで時間になり鑑賞タイムは終了。今期の感想を伺うと、「昨年はアートを鑑賞すること自体に身構えていたけれど、今年は徐々に何を言っても良いんだと思うことができ、段々と自由に発言できるようになった」「最初は何で作られているのかなど、物質的な正解を追い求めがちだったけれど、もっと表現について考えるようになった。作家の意図や、作品から感じられることを紐解こうという視点を得ることができた」「アートそのものに興味が出てきたので、美術館にも足を運びたい」など嬉しい感想をいただくことができました。
アートに興味がなくても、前提知識がなくても、全員が参加できることが対話型鑑賞のメリットでもあります。何度も体験いただくことで心理的安全性が培われ、そして、他者の意見を軽やかに受け入れ呼応できるようになってゆく、そんなプロセスを皆さんに体感いただけているようです。
今年もご参加いただきありがとうございました。