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対話型アート鑑賞ワークショップ 二期目:第2回

田中良和 | ノコリモノ ( https://lights-gallery.com/archive/2023/06/1620/ ) の展示空 間にて、2 年目のご参加となる皆さまと、対話型鑑賞ワークショップを開催しました。

「さらに深く広く思考する」ことを目的に計 3 回の鑑賞に取り組む本コース。一回目では 「視点を広げる」をテーマに、ご自身の思考を観察したり、他の方の意見を取り入れたりし ながら、発想を横に広げていくワークショップを行いました。二回目の今回は「視点を深め る」がテーマ。対話型鑑賞で鍵となる「作品のどこからそう思ったか?」の質問を意識しな がら、ご自身を巡る思考に集中し、掘り下げていくことにチャレンジしました。

今回の展覧会では、これまでのアンケートでもご希望のあった、2 階スペースでワークショ ップを行いました。古い家屋の趣を残した部屋に広がるのは、土のような質感をまとった古 い蛍光管の数々です。みなさまにはこれまで通り、作品に関する情報は一切お伝えせずに、 鑑賞をスタートしました。

これまでのワークショップの振り返りと、今回のテーマの解説を済ませると、まずは作品を 静かに鑑賞することから始まります。みなさま考えが浮かんできたところで、意見をシェア いただきました。同じサイズの棒状のものが整然と並ぶ姿に「建築物の屋根の構造のよう」 という声や、「それぞれの作品の色の違い、微妙な表情の違いが面白い」といった感想があ がりました。 作品のどこからそう感じたのか?を丁寧に紐解いていくと、作品の配置、サイズ、一つ一つ の質感の違い、人工物的なものに土のようなものが付いている対比的構造など…作品の持 つ要素が次々とあがります。 そして、特有の形状や黑ずみから早々に「これは蛍光管ではないか?」という意見が。ここ は事実としてお伝えすると、みなさま納得のご様子でした。

「蛍光管」という一つの発見から、対話は作品の持つメッセージに発展します。「人工物に 対するアンチテーゼ?」「明るすぎる都市の光を土で覆っている?」「土が覆う姿は、自然が 人工物を凌駕していくイメージにも見える」など、みなさま一つの共通認識から連想するよ うに、作品の読み解きが進みます。 その後も一つ一つの会話から発見が生まれ、「作品を横から見ると地層みたいにつながって いるように見える」「見る角度によって柔らかい布のような質感にも見える」といった新た な視点も出てきました。

最後に少し休憩を挟み、改めて「どこからそう思ったのか?」追及しながら鑑賞することに。 参加者のみなさま同士の質問も OK としました。すると、これまで以上に他の方のご意見 に集中し「確かにそう見える」「こうはどうだろう?」と、共感しながら思考を深掘りして いく姿勢が見られました。 話はそれぞれの作品の色の違いから、光の当たり方の話に展開します。全員でさまざまな角 度から作品を見て、自然光と部屋の照明で見え方が違うことに気がつきました。そこで、部 屋の照明を消してみることに。すると、これまでと作品の色が全く違って見えることが分か り、みなさまとても驚いたご様子でした。一つ一つの会話に集中し、リレーを繋ぐようにし て出てきた「電気を消すとどうなるか?」の発想から、作品の新しい一面に辿り着いた瞬間 でした。

こうして、シンプルな対話の中で意識するポイントを盛り込むことで、今回は「思考を深め、 そこから新しい視点を得る」体験をしていただくことができました。会話に集中しそこから 何かを発見し、さらなる思考に繋げていく姿勢は、結果的に「視点を広げる」ことにもつな がっていきます。

ご参加誠にありがとうございました。

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