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対話型アート鑑賞ワークショップ : 三期目 3回目

Ichigo Sugawara|たいせつなひかり (http://lights-gallery.com/archive/2024/11/1921/) の展示空間にて、3期目となる参加者の皆さまと、対話型鑑賞ワークショップを開催しました。

今年度のワークショップでは、3期目の皆さまとは「対話の場を意識する」をテーマに開催しています。最終回となる今回は、皆さんに鑑賞する作品を選んでいただきました。

皆さんが選定された作品は一階展示スペースにある、一枚の風景写真。他の作品と比べると具象的な要素が少なく、白に近い繊細な濃淡のある黒白写真です。選定の理由を伺うと、「他よりも白がベースの作品で、難しいかもしれないけれど逆に想像力が膨らむかもしれない」との理由からでした。

早速鑑賞を始めると、最初に出てきたのは「曇ったような印象なのに安定している」「安心感がある」という意見。深堀りしてみると、第一印象の白がかった色の印象や、うっすらと浮かぶ水平線と轍のラインが画面中央に向かっていく構図が見えてきました。

対話によって、会話はさらに広がります。作品のある箇所を道や轍だと認識される方が多かったので、どうして道に見えるのか?投げかけてみました。すると、「一度雪が降って、その上を車か何かが通った跡に見えるから」「私は実はその部分は川に見えていて、こちら側が道かと思った」「物影のない真っ白なこの辺りはどうなっているのだろう?」など、皆さん共通して「雪景色」だと考えていた作品ですが、実際には風景の認識がさまざまであることがわかりました。白を基調とした作品を選定された見込み通り、その後も作品に感じられる余白から、見える景色がどんどん変化していきます。

途中、これは写真なのか?という意見があがったので、写真であり撮影者がいるのだということをお伝えすると、「風景の水平線がちょうど自分の目の位置にくる高さ。まるで景色の中の道に自分が立っているようだ」「こんなに広々として建物がない雪景色は、実際にはどこにあるんだろう?北海道だろうか?」といった発想にもつながりました。

終盤には作品を取り巻く環境にも注目いただき、額装の話になりました。「木枠がついていることで、柔らかく優しい印象になっていると感じる」「額装されていなかったら、もっと壁面の白色と溶け込みそう。額があるからこそ、作品世界をグッと集中して鑑賞できる効果があるのではないか」「写真の中の白色、額の背景の白、展示壁の白。どれも全く違っていて、全てに色がついている感覚になってきた。最初は白色の作品だと思っていたけれど、この中に白はないのでは…?」

対話の中でたくさんの視点が出たところで、時間となり鑑賞タイムを終了しました。

最後にこの作品を選んで実際に鑑賞してみた感想を伺うと、「対話の中で、想像していたよりも多様な風景が見えてきた」「自分にはなかった見方に沢山出会うことができた」といったご意見を伺うことができました。

また、9回分のワークショップの総括としてご感想を伺いました。「一つの作品を集中してみることがなかったが、作品一つ一つに思い出ができたのは初めて。作品に愛着が湧き、どんな会話をしたか思い出せることが面白い」「最初は無意識に正解に辿り着こうとしている自分がいたが、徐々に、対話の最後にどんな見解に辿り着けるのか、正解を気にせずに楽しみながら対話できるようになった」「普段自分が好んでみる作品とは違ったジャンルの作品にたくさん出会い、ワークショップを通して、自分では素通りしていたかもしれない作品(もの/こと)でも向き合ってみると沢山の視点が得られることに気づけた。」など嬉しいご感想をいただくことができました。

アート作品の鑑賞には、歴史的背景や作家の意図などを知り、理解することはもちろんとても大切なことです。ただし、この対話型鑑賞ワークショップでは、よりアートを通してご自身や参加者同士を見つめることにフォーカスしています。アートとの関わり方の一つとして、普段の仕事や生活の中に活かせる気づきがあれば大変嬉しく思います。

今年もご参加くださり誠にありがとうございました。

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