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対話型アート鑑賞ワークショップ :二期目 2回目

Satoshi Iwama | 一泉の穴 (https://lights-gallery.com/archive/2024/08/1798/ ) の展示空間にて、2期目となる参加者の皆さまと、対話型鑑賞ワークショップを開催しました。

今年度のワークショップでは、2期目の皆さまとは「さらに深く広く思考する」ことを目的に鑑賞に取り組みます。一回目では「視点を広げる」をテーマに開催しました。 2回目となる今回は「視点を深める」をテーマに行います。

導入では、視点を増やすことと、視点を深めることの違いを、スライドも使いながらお話し、深掘りする思考のイメージをみなさんと共有しました。

今回の作品は1階展示空間に広がる大きな立体作品2つです。作品の印象についてお伺いすると、「造形のアンバランスさから緊張感を感じる。また、ひび割れたりしているところから、どちらの作品もどんどん膨張しているような感覚がある。そのうち中から何か出てきそう…」という意見が。表面に着目したところから「見た目の印象から土っぽさを感じる」というお話もあがりました。そこで、作品が土や麻、井草を素材に作られていることをお話しすると、「入ってきた瞬間に作品の匂いを感じたが、素材を聞いて納得。どこか懐かしい感じの印象を受けるのは、日本の建築と近い素材だからかもしれない」という感想を伺うことができました。

さらに対話を続けると、作品の鑑賞位置が話題に。「この位置から鑑賞すると作品が宙に浮いているように見えて、アンバランスな形をしているのは本当は浮かせたかったからではないか、という気がしてくる」という考察が出てきました。皆さん同じ角度から鑑賞され、「ここが正面と思えるくらいしっくりくる!2つの作品が重なって見えるので、奥行きが出るのかも」「2つ作品が重なり合う姿が、まるで山と気球のよう」といった意見が次々挙げられました。

夕方日が傾いてきたところで、今度はライトをつけて作品を鑑賞してみることに。すると、先ほどよりも陰影がついた作品に印象も変わったご様子。「先ほどよりも陰影がくっきりとしたからか、山が聳え立つような感覚が増した」「中心の面が凹んでいるからそう見えるのかもしれないね」「ライトが当たると作品の表面が実は思っていたより凹凸があることがわかる、質感が違ってみえる」など、互いの意見に耳を傾けながらさまざまな発見がありました。

さらに対話を進めていくと、同じ作品でも「古くに作られたもの」と感じる人と「新しくできたもの」と感じている人がいることがわかりました。土やひび割れの質感と、それがライトで照らされている様子が昔の時代に作られた作品を展示しているように感じた方もいれば、鋭角な角が綺麗に残っていることや、形自体から真新しさを感じた方もいらっしゃいました。それぞれの感じ方の違いを新鮮に受け止め、互いに「どうしてそう思ったの?」「こっちの作品はどう?」と会話が広がります。

最後にこの流れで、お互いに考えたことを言い合うだけではなく、自由に質問をし合う時間を取りました。皆さま他者の質問から更に考えを深めていきます。例えば、「作品の正面はどこか」という話になった際には、「正面を決めてしまうのは正解を決めること?決めてしまって良いのか?」という問いかけもありました。最後には、「(一般的に)作品をつくるアーティストは私たちに明確なメッセージを受け取って欲しいのか、それとも自由に想像して欲しいのか、一体どちらだろう」という鑑賞の態度についての疑問も伺えました。様々な見方や感じ方が出てきた作品だからこそ、「そもそも」の部分を考えてみたくなってくるのでしょう。抽象的な問いが誘発され、普段は考えないことに目を向けてみる、アートと対峙することで生まれる非日常かつ大切な時間を味わっていただけたのではないかと思います。

今回は「視点を深める」というテーマだったこともあり、皆さん一つ一つの意見も、常に「なぜなら」という理由があり、そこから話が発展していく様子が印象的でした。また、誰かの意見に対して、自身の意見を重ねたり、別の見方が出てきたりしながら、自然と対話が進んでいく回となりました。

様々な視点で作品をみながら、最後には哲学的な問いにも繋がってゆき、思考が巡っていく感覚を全員で共有することができました。今まで以上に、対話や、互いに話を構築していく場となれたのではないかと思います。

ご参加いただいた皆様ありがとうございました。

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