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対話型アート鑑賞ワークショップ 二期目:第1回

植村 宏木/北へ降る ( http://lights-gallery.com/archive/2023/03/1592/) の展示空間にて、 昨年から引き続き 2 期目となる参加者の皆さまと、対話型鑑賞ワークショップを開催しま した。

今年度のワークショップでは、2 期目の皆さまとは「さらに深く広く思考する」ことを目的 に計 3 回の鑑賞に取り組みます。一回目では、「視点を広げる」をテーマに開催しました。

今回の展示は、地面に広がる乾燥した地表のような作品や、ところどころに置かれたびんに 入った液体、コンパスの針といった要素が組み合わさり、1 階フロア全体を使ったインスタ レーション。少し鑑賞難易度の高い展示でしたが、昨年度ご参加の皆さまは会場内をゆっく りと移動されながら、すぐに展示に集中して鑑賞されていらっしゃいました。

最初に今年度のワークショップの概要をお話した上で、「視点を広げる」というテーマと、 鑑賞プロセスの中で広げるポイントを簡単にお伝えし、すぐに対話型鑑賞に入りました。

解釈を広げる時間を設けるために通常より少し⻑めに最初の鑑賞時間を過ごした上で、皆 さまの意見をシェアする時間に移ります。シンプルな構成要素からなる展示ですが、「博物 館の展示のよう」「乾きと潤い」「過去から未来へ」といったキーワードがどんどん出てきま す。「不思議な感じがする」といった最初の感覚を頼りに、それだけで思考を閉ざさず、そ の先にある解釈を引き出そうとされる姿がありました。皆さま積極的にテーマを意識し取 り組まれる姿勢がとても伝わってきました。 皆さまから自発的に意見が出てきていたので、視点を整理したり、「さらに発見はあります か?」と問いかけながら、鑑賞を後押ししていきます。

後半になると、少しずつ発言のペースが落ち着いてきましたが、今回のテーマに沿ってもう 一押し。これまで出た視点をフレーミングしながら、まだない発想はないか、皆さまに問い かけます。すると最後には、最初の「不思議な感覚」や「まとまりきってないけれど……」 とお話されていたことが紐解かれていくような、コメントが出てきました。「土が乾いてで きるひび割れの模様は偶然性を孕んでいるのに、ギャラリーの床面はきちんと整備された もの。あえて作品と床が対照的に見えるように、配置されているのではないか」「水や土と いった自然なものに対し、瓶・コンパス・建物の構造や作品に見られる直線的な境界線は人 工的」「自然光で見ているから無機物が際立つ感じがする」など。

たっぷり 45 分ほどかけて鑑賞し、たくさんの視点の発見につながる鑑賞体験となりました。 鑑賞のヒントの少ない展示でしたが、それだけに解釈の可能性は広がります。ご自身でテー マを意識し取り組まれたからこそ、広がりを感じる鑑賞体験となりました。「過去の 3 回よ りもいろいろな視点が出てきてすごく面白かった」「回を追うごとに意見を言い合う緊張感 が薄くなっていき、楽しくなってきた」といったご感想をいただきました。 ご参加誠にありがとうございました。

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